人間らしさの話

誰にでも恐らく理性では抗えない欲求というものがあって、その対象は人によって、アルコールだったり、ギャンブルだったり、セックスだったりする。
自分の中の冷静さとか客観性を総動員したとしても、どうしても欲しい、どうしても手を伸ばさずにはいられない、触れて、口に入れて、咀嚼して、嚥下しなければもう気が触れてしまうーーそういうものに出会ってしまうのが人間らしさなのだろう、きっと。

『私はロボットではありません。』
それを証明するために、私達はわざわざ、ぐにゃぐにゃの読みづらい数字やカタカナを入力する。
どうしても判別できないものに出会えば、次の画面へスキップして、どうにか自分の人間らしさを明らかにしなければならない。
誰に対して?
コンピュータに対してだ。
そういう仕様になっているのだ、何もかも。

昔、私にこう言った人がいる。
「社会に向けて言いたいことを、そのまま口にしてごらん。」
そんなものがあるくらいなら、こっちが教えてほしかった。
政治参加に積極的な人を怒らせるつもりはないのだが、私はアレが怖い。
主張の是非は抜きにしても、人間でない者の皮を被った人間のように見える。
本人の意思とは遠いところで、人間らしさを失った何者かが叫んでしまっているように感じる。
「助けてくれ。限界だ。」ーー悲鳴なのだと思う。