夢の話

豚は自分の運命を選べなかった。生かされるか、殺されるか。後者ならば、この後。小さなトラックに箱詰めにされて、悲しい場所へと連れて行かれる。

 

母は豚の運命を決めなければならなかった。生かすか、殺すか。後者ならば、この後。整頓された豚の行列を、前へ前へと促す。背中やら腰やらを摩りながら。

 

軍手をした叔母が親指の付け根で涙を拭いながら、言う。

「私だって辛いのよ。」

 

父は何処へ行ったのだろう。

 

私は逃げた。混雑した定食屋へ入って、牛肉と玉ねぎの浮いた薄い色のスープを飲む。出汁が取れていないのか、ただの塩っぽい風味が口の中に広がる。

 

そこへ妹がやって来て、陽気な感じで隣に座った。何かを執拗に語りかけてくるが、私の耳には届いていない。自分の周りにあったグレーの薄い膜が、だんだんと分厚くなっていくのがわかる。

 

私はまたもや逃げた。伝票を掻っ攫って、二人分のスープのお代を払う。妹が追いかけてくる。

 

「付いてこないで。私は一人になりたいの。」

 

 

唯一の兄に助けを求めた。ええと、助けを求めるときは、どうするんだっけ。

 

「お兄ちゃん、助けて。」