雨の話
雨が降っている。
私はしょぼくれている。
この雨は明日まで続くらしい。
ーーおい、生きてるかー?
数回一緒に寝た人からの、突然のメッセージだった。
どうしたのだと尋ねる私に、彼は続けた。
ーー雨だから、しょぼくれてないか確認。
落ち込むでも塞ぎ込むでもない、『しょぼくれる』という彼らしさに笑ってしまった。
ーー今、少し元気になった
ーー明日も雨だから、ちょいちょいは幸せに暮らすように
数回一緒に寝ただけなのに、彼は私のなんとなくをおおよそ理解していたように思う。
絵文字も顔文字もない、だけれど暖かいメッセージだった。
実家の荒れている私に、彼は度々部屋を貸してくれた。
彼の部屋はとても変わっていて、本来なら誰もがベッドを置くであろう場所には、大きな冷蔵庫が立っていた。
カーテンを開けると日差しが気持ちよくって、ベランダで吸う煙草が美味しかった。
私の人生の中で、もっとも静かで、健やかな時間。
私も何かお返しがしたいのだと言うと、少し悩んだ彼は、自分がゲームをするところを見ていてほしいと言った。
セックスをすることもあれば、しないこともあった。
一緒に料理をするのは、少しだけ緊張した。
海辺を散歩すると潮風にあてられた髪の毛がギシギシになっちゃって、でもそれもいいなと思った。
雨が降っている。
私は相変わらずしょぼくれている。
この雨は明日まで続くらしいけれど、ちょいちょいは幸せに暮らそうと思う。